あなたのかゆみ、肝臓病のせいではないですか?
体のかゆみと肝臓病は何の関係もないように思えますが、実は密接な関係があるんです。
肝臓病とかゆみの関係、その解決法について取り上げたいと思います。

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肝臓病の患者さんにはかゆみを訴える方が多い

体のかゆみと肝臓の病気・・・関係ないと思っていませんか?
一見なんの関連もなさそうに見えるのですが、アンケート結果によると肝臓に病気を持つ方の気になる症状の第3位が”皮膚のかゆみ”だと言われ、4〜5人に1人がかゆみに悩んでいます。

特に原発性胆汁性胆管炎(PBC)の患者さんでは、約7割の方がかゆみを訴えられるそうです。

※気になる症状の第1位は倦怠感、第2位は体力の低下です。

かゆみの原因は?

肝臓病の患者さんのかゆみは肝臓で作られて消化を助けている、胆汁のうっ滞が原因ではないかと言われています。

※ただし、胆汁のうっ滞の重症度とかゆみの強さは相関しないことが知られています。

体のかゆみが出た場合、まず相談しようとする相手先は皮膚科だと思います。
しかし、肝臓の病気の治療中に我慢できないようなかゆみがある場合、それは肝臓と関係があるかもしれません。

新しく皮膚科を受診する前に、治療を受けている主治医の先生に相談することが勧められます。
肝臓病のかゆみはアレルギーなどの通常のかゆみとはメカニズムが違うため、皮膚科でよく使われるステロイド外用薬やアレルギーの飲み薬は効きづらいのです。

肝臓病のかゆみに使える薬『レミッチ』とは?

かゆみのメカニズムには、中枢性と末梢性のものがありますが、肝臓病の患者さんが悩まされるかゆみは中枢性のものだと言われています。
中枢性では、かゆみを制御する体内物質のバランスが崩れてしまうことが原因です。

このようなかゆみに昨年から使えるようになった薬の1つが『レミッチ』です。
かゆみを取り除くという意味の英語『remove itch』が名前の由来です。

従来の薬では効果のなかったかゆみも改善させることができると評価されています。

『レミッチ』がかゆみに効くメカニズムは?

レミッチはかゆみを制御する体内物質のバランスを正しく戻すことにより効果を発揮します。

具体的には、中枢性のかゆみが生じているとき、オピオイドμ受容体とκ受容体のバランスが崩れ、μ受容体の方が強く働いている状態となっています。
レミッチはκ受容体を刺激して崩れたバランスを是正します。

κ受容体を刺激することにより、なかなか寝付けない、便秘や頻尿、眠気やめまいの副作用が生じることがあります。
慢性肝疾患のかゆみ改善に用いる場合、副作用は重篤でないものの、頻度は高く、6割程度の方に見られます。

このようなメカニズムは、他のかゆみ止めの薬とは全く異なるものです。
通常のかゆみ止めはいわゆるアレルギーの薬で、ヒスタミンという化学物質の働きを邪魔することにより効果を発揮します。

メカニズムが異なるため、他の薬で効かなかったかゆみも改善することのできる可能性があります。

『レミッチ』はどんな薬?飲みやすい形?特徴は?

レミッチは最初にカプセル剤として発売されましたが、2017年よりそれに加えてOD錠が発売されました。
OD錠とは、口に含むとラムネのようにとろけるタイプの飲み薬です。形が崩れるため、飲み込む力の弱い方でも飲みやすいものになっています。直径は7mmのためつかみやすい大きさになっています。

また、フィルムコーティング錠ため、PTPシートから出しても光、湿度に安定です。
添付文書上は湿度を避けてとの記載がありますが、乾燥剤をつければ大丈夫とのことです。

つまり一包化が可能です。
たくさん薬を飲まれている方でも他の薬と合わせて飲みやすいように薬局でまとめてもらうことが可能です。

『レミッチ』のデメリットは?値段と副作用が気になる!

新しいタイプのかゆみ止めであり、効果も高いとされているレミッチですが、デメリットもあります。

値段と副作用の面についてご説明します。

『レミッチ』のデメリット①:高価

薬の値段は2年ごとの薬価改定で下げられ、また特許が切れることで価格の安いジェネリック医薬品が使えるようになりますが、レミッチはまだまだ新しい薬であるため、高いお薬です。

3割の自己負担の方であれば、1か月あたり約1万円のお薬代がかかります。

『レミッチ』のデメリット②:副作用

薬なので副作用がないわけではありません。
特に肝臓を悪くしている方では、薬の代謝が普通の人よりも難しいため、副作用が出やすくなっており、約6割の人で発現するというデータがあります。

・なかなか寝付けない
・便秘や頻尿が気になる
・眠気やめまいがする

このような症状は、レミッチの副作用によるものである可能性があります。
気になるようであれば、薬の中止を含めて主治医に相談してください。

かゆみの予防は生活習慣の改善が大事

薬を使う以外にも普段の生活の中でかゆみを軽減する方法があります。
今日からでもできるかゆみ改善の工夫、どうしても掻きたいときに症状を悪化させないための方法をご紹介します。

かゆみを予防する生活上の工夫7つ

①保湿をする
肌のバリア機能を高めることによりかゆみ予防となります。
特に水分が失われやすい風呂上りに有効です。

②長風呂や熱い風呂は避ける
皮膚を守っている皮脂が溶け出してしまうため注意が必要です。

③石鹸やこすり洗いに注意
皮脂が洗い流されすぎて不足したり、皮膚に傷ができてかゆみの原因となります。

④木綿や絹の衣類を選ぶ
肌に刺激を与えにくいため、かゆみの予防となります。

⑤こまめなシャワー
汗が残っているとかゆみの原因となるので洗い流すことが大事です。

⑥暖房やこたつによる乾燥に注意
暖房した部屋やこたつの中は湿度が低くなりやすく、乾燥するため注意が必要です。

⑦部屋の加湿
乾燥はかゆみにつながるため、空間から保湿することが大事です。

この中でも最も大切なのは保湿です。
保湿をすることにより、皮膚のバリア機能が高まって強くなり、かゆみの予防となります。

ローションクリームなど、使う保湿剤はなんでもかまいません。
個人の使用感の好みで選んでいただければ大丈夫です。

まずは乾燥しやすいお風呂上りから使うことを始めましょう♪

どうしても掻きたいときの方法

①爪はやすりで整える
掻いてしまっても傷ができないように丸く整えます。

②手のひらを自分に見えるようにして掻く
爪を立てないようにすることで皮膚に傷がつきにくくなります。

③孫の手に布を巻く
これも皮膚に傷をつけにくくするための工夫です。

④軽くたたく

⑤服の上から掻く

全て皮膚に傷をつけないようにする工夫でした。

個人的には、保冷剤で冷やして感覚を鈍くすること、メントールなどスーッとする成分の入ったかゆみ止めを塗ることなどでも気休め程度にはかゆみが改善されると思います。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました^^

 

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。