最新の睡眠薬である『ベルソムラ』は、昨年のテレビ番組『ためしてガッテン』で話題となりました。
今回の記事では、放送内容で紹介されていた、糖尿病に対する改善効果にも焦点を当てていきたいと思います!

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『ためしてガッテン』でベルソムラは糖尿病に効果アリと話題に!

昨年2月にNHKの人気番組『ためしてガッテン』で『最新報告!血糖値を下げるデルタパワーの謎』という特集がありました。
特集内で、『オレキシン受容体拮抗薬』と呼ばれていた薬がベルソムラです。

睡眠不足が血糖値に影響を与えるのは、多数の報告があり、広く知られていることですが、特集内では『睡眠薬が糖尿病の治療や予防に効果アリ』と表現してしまい、問題となりました。

※後日、放送内容は行き過ぎたものだと訂正する発表がされています。

放送内容のどのあたりが誤解を招くようなものだったのか、どこまでが正しい情報であったのか、ベルソムラの特徴を踏まえながらお伝えしてきたいと思います。
糖尿病の改善とオレキシン受容体拮抗薬のベルソムラの関係性について正しい情報をお届けします。

オレキシン受容体拮抗薬『ベルソムラ』はどんな薬?

2014年に新しく発売された睡眠薬です。
覚醒の維持に関与している神経伝達物質のオレキシンの作用を妨げることで、眠気をおこさせます。

従来使われてきた睡眠薬とは、効果を発揮する場所が異なっており、自然に近い眠りをもたらすことができるといわれています。

落ちるように一気に睡眠に入っていくベンゾジアゼピン系睡眠薬とは使用感が異なり、ベンゾジアゼピン系睡眠薬に慣れてしまった方は最初に違和感を感じられるそうです。

ベルソムラの副作用は?

悪夢が特徴であるといわれています。

これは、従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬と異なり、ベルソムラに夢を見ないようにさせる効果がないことが原因です。

不眠症で睡眠薬を飲まれるような方は、なにかしらの悩みや不安を抱えていることが多いと思われます。
夢には覚醒時の出来事や考えていたことが投影されるので、それらの悩みや不安が悪夢として出てくるのです。

ベルソムラ自体に悪夢を見させる副作用があるのではなく、睡眠薬を飲む方に悪夢を見る人が多いのではないかと考えられます。

しかし、悪夢がつらく眠っても疲れが取れないと感じられるのであれば、それは立派な副作用です。
ベルソムラ以外の夢を見させないようにする薬を使うのも一つの選択肢です。

睡眠と糖尿病の関係は?今回の放送の問題点は?

睡眠と血糖値には関連性があり、睡眠不足が糖尿病のリスクを上昇させるという報告があります。
これは広く知られた正しい事実です。

今回の放送で問題となった点は

・ベルソムラのみに注目し、ほかの睡眠薬よりも優れたイメージを与えた
・睡眠薬さえ飲めば、糖尿病を改善できるイメージを与えた

以上の2点です。

ベルソムラはほかの睡眠薬よりも優れている?

ベルソムラは、従来の睡眠薬に比べて、自然に近い状態の睡眠をもたらすことができると言われています。

今回のためしてガッテンの放送の情報源となった、大阪市立大学医学部附属病院の報告も、ベルソムラのそのような特徴に着目し、調査対象として選んだのでしょう。

しかし、ベルソムラがほかの睡眠薬よりも優れていると判断するには、ほかの睡眠薬を使用した方との比較データが必要です。

今回の報告では、ほかの睡眠薬の使用者との比較データがないのに、あたかもベルソムラが一番優れていると思わせるような放送をしてしまったことが問題でした。

また、ベルソムラは発売されてから3年と歴史が浅く、従来の睡眠薬と比べて使用データがまだまだ少ないお薬です。
特に長期間飲んだ場合の影響については、データがありません。

これから新たな副作用など、ネガティブな情報が出てくる可能性もないわけではありません。
ベルソムラは新しい作用の薬で、画期的ではありますが、イメージだけで最もいい薬という印象を与えてしまうのは、行き過ぎていると私を含めた多くの医療人が考えた結果、番組に批判が集まったのだと思われます。

ベルソムラが優れた薬かどうかは、これから長い時間をかけて、多くの方に使っていただいてわかっていくことだと考えます。

睡眠薬さえ飲めば、糖尿病は改善する?

そんなはずはありません。
バッサリ切ってしまいました(笑)

確かに、睡眠不足と血糖値には関連性があります。
十分な睡眠をとることで、糖尿病になるリスクは低くなるのは事実です。
糖尿病の方が睡眠不足を改善、つまり正しい生活習慣に戻すことで血糖値も多少改善するかもしれません。

ですが、そもそも糖尿病は食事や生活習慣、体質などが複雑に絡み合って起こる病気です。

食事内容や運動習慣、適切な治療を無視して、睡眠だけしっかりとったとしても、糖尿病の改善には不十分です。
睡眠薬にそんな抜群な効果があるのならば、とっくの昔に「糖尿病の薬」として売られていたことでしょう。

睡眠薬だけに過剰な効果を期待せず、普段の生活や治療を大切にすることが大事です。

いかがでしたか?
さらに疑問があればご連絡くださいね^^

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。