今回の記事のテーマは、”潰瘍性大腸炎で使用する注腸ステロイドの比較”です。
2017年11月に潰瘍性大腸炎の活動期に使用できる新しい注腸剤レクタブルが発売開始されました。
今まで使われてきた注腸剤との違いをまとめたいと思います。
目次
潰瘍性大腸炎とは?
潰瘍性大腸炎とは、大腸に炎症が起きることによって、腹痛や下痢、血便などの症状が生じる病気です。
腹痛や下痢、血便などの症状がある活動期と、治療により症状が治まった寛解期を繰り返す特徴があります。
治療により寛解期となっても、再び大腸に炎症が生じる(再燃)ことから、再燃を予防するために長期にわたる治療が必要になります。
大腸の炎症状態が続く事により、大腸癌のリスクにもなるため、定期的にがん検査を受けることも大事です。
注腸ステロイド薬とは?
ステロイドの注腸薬は、活動期の炎症を抑える薬として使用されます。
重症時には、内服ステロイドも使用されますが、注腸薬は病変部分に直接ステロイドを届けられるため、副作用を軽減することができます。
ステロイド製剤は、活動期の炎症を抑えるための薬であり、寛解期を維持する効果は認められていません。
活動期の短期間のみに使用されます。
潰瘍性大腸炎に使用される注腸剤
坐薬(リンデロン坐剤)
ステロイドとして、ベタメタゾンを0.5mgと1.0mg含有する坐剤です。
どちらも直腸病変の活動期の炎症を抑えるために用いられます。
ベタメタゾンとして1日0.5mg~2mgを1~2回に分けて直腸内に挿入します。
薬はS字結腸まで届かないため、直腸のみの作用です。
形状はコンパクトで常温保存可能なため、持ち歩きに便利です。
肛門に入れた後の違和感が少なく、漏れる心配がほとんどないことが利点です。
1mgは1個100円弱で値段も安めです。
液体の注腸剤(プレドネマ・ステロネマ)
液体の注腸剤は2018年5月現在、プレドネマとステロネマの2種類が発売されています。
注腸後は体位を変えながら薬をいきわたらせて、安静にする時間が必要です。
薬を入れておく目安の時間は特になく、できる限り長い時間保持しておくことが大事です。
液体のため垂れて出てきてしまうという訴えが一部あります。
寝る前に使用する場合には、防水のシートを引く工夫をされる方もいるようです。
必ず薬が垂れてきてしまうわけではなく、炎症のない健康な製薬会社の方が試したところ、挿入直後から歩いても漏れることは無かったそうです。
また、液体量が多いため、刺激となって便意を起こしてしまうことがあります。
一度に全量を注腸することで起こりやすいため、感覚が慣れるまでは、便意が催されない量だけ注腸することをお勧めします。
プレドネマ注腸
ステロイドとして、プレドニゾロン16.4mgを60mLの液体中に含む注腸剤です。
1日1個を直腸内に注入します。
直腸およびS字結腸まで薬が届き、腹痛、下痢、血便などの症状を改善します。
ステロネマ注腸
ステロイドとして、ベタメタゾン3mgを100mLの液体中に含む注腸剤です。
1日1~2個を直腸内に注入します。
液量が100mLのものと、50mLの2つの規格があります。
液体の濃度は同じであるため、50mLの方は有効成分量が100mLの半分になります。
どちらも活動期の炎症を改善するために用いられます。
プレドネマと同様に直腸およびS字結腸まで薬が届き、100mLでは、さらに奥の脾彎曲まで届きます。
注腸フォーム(レクタブル)
ステロイドとして、ブデソニドとして2mgを1回分に含む注腸剤です。
1回あたり1プッシュ、1日2回直腸内に使用します。
薬は泡状になっており、付着性があります。
液体の注腸剤と比較すると垂れにくいようですが、薬が漏れてくるのが心配で、生理用のナプキンを使われる方もいらっしゃるそうです。
直腸およびS字結腸まで薬が届きます。
手のひらサイズの機械に14回分が充填されており、プレドネマやステロネマと比べてコンパクトな形状になっているのが特徴です。
また、薬を注入する際に横になる必要がなく、立ったままで
使用できるため、外出先での使用が容易です。
価格比較(2018年5月)
医薬品名 | 規格 | 薬価 |
リンデロン坐剤 | 0.5㎎ | 68.5円 |
1㎎ | 96.7円 | |
プレドネマ注腸 | 20㎎ | 627.9円 |
ステロネマ注腸 | 1.5㎎ | 411.9円 |
3㎎ | 584.3円 | |
レクタブル注腸フォーム | 2㎎ | 6826.9円(487.6円/回) |
リンデロン坐薬の安さは際立ちますが、他の薬の価格にはほとんど差がありませんでした。
炎症の場所や使用感の好みによって使い分けていくものだと思われます。
潰瘍性大腸炎は、長く付き合っていかなくてはならない病気です。
患者さまが治療が少しでも快適に行えるように、ご自身にあったお薬を選択できるよう、情報提供していきたいと思います。
それではまた!

rina

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