抗精神病薬を飲むと太る、という話をよく聞きます。
主要な抗精神病薬8種(レキサルティ、エビリファイ、リスパダール、セレネース、セロクエル、ジプレキサ、インヴェガ、ロナセン)について、体重増加の副作用の頻度を比較してみました。
目次
添付文書から読み取った体重増加の頻度比較
抗精神病薬 | 体重増加の頻度 |
レキサルティ | 1‐5% |
エビリファイ | 10-20% |
リスパダール | 34.2% |
セレネース | 5%未満 |
セロクエル | 1.3% |
ジプレキサ | 25%以上 |
インヴェガ | 14.7% |
ロナセン | 5%未満 |
特にジプレキサとリスパダールで、体重増加の副作用の発現頻度が高いことが分かります。
リスパダールには、統合失調症と小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の二つの適応があります。
このうち、体重法増加が報告されているのは、小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性の治療に用いた場合です。
この場合には5~18歳の成長期に使用されるため、体重増加の報告が多くなったと予想されます。
リスパダールの代謝活性体である、インヴェガでも14.7%の高い頻度が報告されていることから、多かれ少なかれ体重増加に対して薬が影響を与えていると考えられます。
ジプレキサと体重増加の副作用
上の表で、最も体重増加の副作用報告頻度が高かったのは、ジプレキサです。
副作用頻度だけを見ると、薬を使っている4人に1人に体重増加が見られます。
ジプレキサに関しては、体重がどのくらい増えるのか、いつまで増え続けるのかについてデータがあったので、ご紹介します。
他の薬をお使いの方でも参考にもなるかと思います。
Q1、ジプレキサでどのくらい体重が増えるのか?
服用後1年間で平均4㎏の増加が報告されています。(1)
ジプレキサを飲んでも、体重の増加量には個人差が大きいことも報告されています。
短期間で体重が増加した方(4週以内に体重増加が7%以上)では平均8.2㎏、短期間で体重が増加しなかった方(4週以内に体重増加が7%未満もしくは体重減少、体重不変)では平均1.6㎏の増量が報告されています。(2)
Q2、いつまで体重が増え続けるのか?
約9か月~1年で体重増加は止まることが報告されています。(1)(2)
Q3、なぜ体重増加が起こるのか?
明確な作用機序はまだわかっていません。
現在は以下のような仮説が示されており、これらが複合して関わっていると考えられています。
・ヒスタミンH1受容体及びセロトニン5-HT2cに対する拮抗作用など神経伝達物質、サイトカインなどの相互作用
・レプチン分泌量の変化
・遺伝子多型
・原疾患に起因する原因(活動性の低下、症状コントロール不良など)
参考資料
(1)久米明人ほか 臨床精神薬理2001;4(10):1441-1458
(2)西馬信一ほか 臨床精神薬理2008;11(6):2085-2092
体重が増えないようにするために
抗精神病薬では、体重が増えることが多く報告されています。
ですが、体重がどのくらい増えるのかについては、個人差が大きく、薬の影響だけでなく個々人の生活の在り方にも大きく依存してくることも事実です。
肥満は、高血圧や高脂血症、糖尿病などの生活習慣病の原因となり、そこから続く大きな病気の引き金ともなります。
食生活や運動習慣を見直し、健康な体を維持できるようにサポートが必要です。
どうしても体重のコントロールができない場合や、体重だけが増えて治療の効果が感じられない場合には、現在使用中の薬から他の薬に変更してもらうのも一つの選択肢です。
患者さんのニーズや症状に合わせて、対応していくことが必要だと思います。
それではまた^^

rina

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