今回は、統合失調症の新薬である『レキサルティ』と先に発売されていた『エビリファイ』がテーマです。

エビリファイとレキサルティは、ともに大塚製薬から発売されている抗精神病薬です。
エビリファイは2006年6月に、レキサルティは2018年4月に販売開始されています。

レキサルティは、エビリファイの進化版だと評判ですが、2種類の薬にはどのような違いがあるのか比較しました。

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作用機序の違い

エビリファイは、ドパミンD2受容体部分作動薬として作用します。

レキサルティでは、これに加えてセロトニン受容体への作用も持っています。
セロトニン5-HT1A受容体の部分刺激作用、セロトニン5-HT2A受容体の阻害作用があります。

また、D2受容体を刺激する強さにも差があります。
エビリファイでは、ドパミンと比較したD2受容体への作用が、3割程度になりますが、レキサルティでは、さらにマイルドになり2割程度となります。

D2受容体への作用の差は、副作用の発現頻度へも影響を及ぼします。

エビリファイとレキサルティの換算

勉強会での情報ですが、レキサルティの維持用量2mg/日は、エビリファイの18-24mgに相当すると言われています。

適応の違い

2018年9月現在のレキサルティの適応は、統合失調症のみです。

これに対して2018年9月現在のエビリファイの適応は以下の通りです。
・統合失調症
・双極性障害における躁症状の改善
・うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
・小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性

海外では、レキサルティはうつ病の薬としても使用されています。
このことから、将来的に日本でも適応が広がる可能性があります。

セロトニン5‐HT1A受容体部分作用により、抗不安作用や抑うつ作用が期待できます。

副作用の差

レキサルティでは、D2受容体刺激作用が弱いため、錐体外路症状が少ないと言われています。
添付文書に記載されている、アカシジアや振戦の発現頻度を比較すると、確かにレキサルティの方が少なくなっています。

またレキサルティでは、5-HT2A受容体阻害作用により、睡眠の質を上げると言われています。
こちらも、不眠の報告は少なくなっています。

製薬会社の勉強会からは、レキサルティの方が優れているという印象を受けました。
ですが、レキサルティは販売後半年程度しかたっておらず、臨床での使用経験がまだまだ少ない薬です。
新薬のプロモーション中ということからも、いいところばかりにフォーカスアップしている傾向性があるとも思われます。
これから新しい副作用も出てくる可能性があるため、過信や期待をし過ぎず、慎重に使用していくことが大事だと思われます。

ジプレキサの添付文書に記載されている副作用は以下の通りです。

統合失調症
国内臨床試験において安全性解析の対象となった743例中、副作用が452例(60.8%)に認められた。
主な副作用は、不眠(27.1%)、神経過敏(14.8%)、アカシジア(11.7%)、振戦(手指振戦含む)(10.5%)、不安(9.6%)、体重減少(9.2%)、筋強剛(6.3%)及び食欲不振(6.2%)であった。
また、主な臨床検査値の異常変動はCK(CPK)上昇(13.7%)、プロラクチン低下(10.9%)及びALT(GPT)上昇(7.0%)であった。

双極性障害における躁症状の改善
国内臨床試験及び国際共同試験において安全性解析の対象となった192例中(日本人87例を含む)、臨床検査値の異常を含む副作用が144例(日本人71例を含む)(75.0%)に認められた。
主な副作用は、アカシジア(30.2%)、振戦(16.7%)、傾眠(12.5%)、寡動(10.9%)、流涎(10.4%)、不眠(9.9%)、体重増加(9.4%)、悪心(8.9%)、嘔吐(7.8%)及びジストニア(筋緊張異常)(5.2%)であった。

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
国内臨床試験において安全性解析の対象となった467例中、臨床検査値の異常を含む副作用が320例(68.5%)に認められた。
主な副作用は、アカシジア (28.1%)、体重増加(10.1%)、振戦(9.4%)、傾眠(9.0%)、不眠(7.3%)、ALT(GPT)上昇(7.1%)、便秘(5.6%)であった。

小児期の自閉スペクトラム症に伴う易刺激性
国内臨床試験において安全性解析の対象となった88例中、臨床検査値の異常を含む副作用が64例(72.7%)に認められた。
主な副作用は、傾眠(48.9%)、体重増加(18.2%)、流涎(9.1%)、食欲亢進(9.1%)、悪心(6.8%)、食欲減退(6.8%)、 e怠感(5.7%)であった。

レキサルティの添付文書に記載されている副作用は以下の通りです。

国内臨床試験において安全性解析の対象となった578例中、臨床検査値の異常を含む副作用が233例(40.3%)に認められた。
主な副作用は、アカシジア(5.7%)、高プロラクチン血症(4.0%)であった。

また、外国の主要なプラセボ対照二重盲検試験において安全性解析の対象となった942例中、臨床検査値の異常を含む副作用が314例(33.3%)に認められた。
主な副作用は、頭痛(6.3%)、不眠(5.7%)であった。

体重増加の副作用の程度の差

1年間、統合失調症の治療のために、レキサルティもしくはエビリファイを単剤服用したときの平均体重増加量は、それぞれ2.1㎏と3.0㎏でした。
このうち、体重の増加量が7%以上であったのは、レキサルティが18.6%、エビリファイが25.3%でした。

逆に7%以上体重が減った方もいて、それぞれ9.2%、12.6%でした。

以下のURLから情報源の論文へ飛ぶことができます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29878915
The effects of brexpiprazole and aripiprazole on body weight as monotherapy in patients with schizophrenia and as adjunctive treatment in patients with major depressive disorder: an analysis of short-term and long-term studies.
Weiss C, Weiller E, Baker RA, Duffy RA, Gwin KK, Zhang P, McQuade RD

統合失調症は、その症状から家に引きこもりがちになって運動量が減ったり、つらい気持ちから過食をしてしまったりと、もともと体重増加をきたしやすい病気です。
体重増加の原因がすべて薬だとすることはできませんが、どちらの薬を使用したとしても体重が増える可能性があるので、食生活や運動習慣に注意が必要な薬と考えられます。

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。