今回も糖尿病治療薬について取り上げます。
インスリンに関与しない画期的な新薬、SGLT2阻害薬がテーマです。

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SGLT2阻害薬とは?

SGLT2阻害薬は、腎臓のグルコース再吸収に関わる部位を阻害して、尿中への糖の排泄を促進し、血糖値を下げる薬です。

今までの糖尿病の治療薬は、血糖値を下げるインスリンの分泌を助けたり、体のインスリンへの反応を高めたりとインスリンに依存した作用の仕方を持つのが一般的でした。
SGLT2阻害薬は、インスリンとは関係なく血糖値の是正に関与する新しい糖尿病治療薬です。

現在発売されているSGLT2阻害薬

商品名 一般名(成分名) 1日使用量
フォシーガ ダパグリフロジン 5~10㎎
ルセフィ ルセオグリフロジン 2.5~5㎎
アプルウェイ
デベルザ
トホフリフロジン 20㎎
カナグル カナグリフロジン 100㎎
ジャディアンス エンパグリフロジン 10~25㎎
スーグラ イプラグリフロジン 50~100mg

上記の表に挙げたように、複数の製薬会社から発売がされています。
各社成分によって、SGLT2のSGLT1と比べた選択性に違いがあるようですが、論文によってその報告はおおきく異なっているのが現状です。

最近、ジャディアンスの心血管イベントやeGFRに及ぼす影響について報告した論文が報告され、人気が高まっています。

SGLT2って何?

腎臓の近位尿細管には、SGLT(ナトリウムイオングルコース共輸送体)というグルコースの再吸収のための輸送体があります。
SGLTには、SGLT1とSGLT2という2つのサブタイプが存在します。

SGLT2の方が、糖の再吸収に大きく寄与しており、90%くらいのブドウ糖吸収に関わっていると言われています。
糖尿病治療薬として開発されたSGLT2阻害薬は、この輸送体をブロックして効果を発揮します。

SGLT2阻害薬は腎臓に悪くない?

作用部位が糸球体でないので、腎臓のろ過機能には影響を与えません。

通常、食事から取り入れられたグルコースは、100%吸収されるので、尿中に出てくることはありません。
これはSGLTがグルコースの再吸収をしているからなのですが、高血糖が続くと吸収しなくてはならない量が増えて、SGLTが疲弊してしまいます。
このことが、腎機能の低下につながります。

SGLT2阻害薬は、グルコースの吸収を邪魔して、尿中に排泄されるように促すので、SGLT2の働きすぎを抑え、逆に腎臓の機能を保護する可能性が期待できます。

尿糖検査を行うと、4+の結果が続くこともあり、不安を感じさせますが、腎臓へ悪影響を与える薬ではありません。

ただし、ACE阻害薬やARBに併用する際には、一時的にeGFRが下がる場合があるので、注意が必要です。

SGLT2阻害薬が使えない人は?

SGLT2阻害薬は、尿から糖を捨てることにより血糖値を下げる薬です。
そのため、十分に尿が出ない人には使えません。

腎不全や透析患者、eGFRが30mL/minを切っているような人には使いません。

SGLT2阻害薬の注意点、副作用は?

脱水予防のための水分補給

SGLT2阻害薬では、利尿薬との併用で死亡例が出ています。
利尿薬で尿量を増やしていたところに、さらにSGLT2阻害薬による尿量増加が重なるため、脱水が起きます。
脱水からケトアシドーシスへ繋がってしまう場合があるので、十分な水分補給が必要です。

特にSGLT2阻害薬の開始1週間は、特に尿量が増えるので注意が必要です。

嘔吐や下痢、体調不良で食事がとれない場合にも、水分が不足しがちになりますので、同様に意識的な水分摂取が必要となります。

他薬との併用時の低血糖

SGLT2阻害薬は、単独で低血糖を起こしづらいと言われていますが、SU剤やインスリンなど他の糖尿病治療薬と併用した際には、引き起こす可能性が高くなります。

SGLT2阻害薬では、特にインスリンとの併用で低血糖の可能性が高くなります。
これは、肥満の改善やインスリン抵抗性の改善により、インスリンの効きがよくなることに起因します。

インスリン併用例では、特に低血糖への注意喚起が必要です。
併用開始時に単位数を減量することも勧められています。

低血糖に陥った際に対応できるよう、ブドウ糖や吸収の早いジュースなどを常に携帯することが大事です。

膀胱炎などの尿路感染症、性感染症

SGLT2阻害薬使用時は、尿中に糖が排せつされます。
そのため、デリケートゾーンに細菌のエサとなる糖分が残ってしまい、感染しやすい状態となります。

トイレでおしりをふくときには、前から後ろへふくこと、こまめにシャワートイレやシャワーを用いて清潔にするなどの小さな努力が必要です。

かゆみや痛みを感じた際には、感染症を疑って、泌尿器科や婦人科を受診することが大事です。

体重減少

SGLT2阻害薬を使用すると、平均的に3㎏程度の体重減少が見られます。
これは、尿中に糖が排せつされることにより、摂取カロリーが少なく抑えられるからです。

ですが、服用中は通常時よりもお腹が空くため、今まで通りの食習慣、運動習慣を継続することが大事です。

体重が減少すれば、糖尿病そのものやインスリン抵抗性が改善することが期待できます。

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。