先日、姪がひきつけ(熱性けいれん)を起こしました。
眼球が回転後に上の方でとまって白目を剥いた状態となり、手足が硬直しました。

派手な発作で生命に危険が及ぶのではないかと、とても心配しましたが、小学校入学前の子供に比較的よく起こる病気ということが分かりました。
今回は、熱性けいれんについてまとめます。

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熱性けいれんとは?

熱性けいれんとは、以下の条件を満たす発作性の疾患です。

・生後6~60か月までの乳幼児期に起こる
・通常38℃以上の発熱をともなう
・発作の原因が不明
・てんかんと診断されたことがない

熱性”けいれん”と名付けられていますが、発作はけいれんのないものも含まれます。
けいれんを伴わない発作には、脱力、一点凝視、眼球上転(白目をむく)などがあげられます。

日本では、30人に1人(約3.4%)の子供にみられると言われており、知り合いの中に熱性けいれんの経験を持っている人が1人はいるだろうと思われる、頻度の高い疾患です。

熱性けいれんの後遺症?てんかんになる?

熱性けいれんは、発作が派手であり、成長してからてんかんを発症するのではないか、発作によって後遺症が残ったり、知能に影響が出たりするのではないか、と不安を抱かせやすい病気です。

ですが、比較的予後はよい疾患で、前述のような影響が出ることはほとんどありません。

けいれんの発作が30分以内であれば、脳に後遺症が出ることは稀です。
9割以上の発作は30分以内に収まりますし、抗けいれん薬も使用されますので、過度な心配は不要だと思われます。

成長後のてんかんの発症についても、9割以上の子供では起こすことがありません。
熱性けいれんからてんかんに移行するわけではないので、過度な心配は必要ありません。

熱性けいれんは繰り返す?再発因子とは?

熱性けいれんは、その後の成長に影響を与えるような病気ではありませんが、発作が繰り返される可能性があります。
再発の確率は約30%と報告されており、以下に挙げる因子に該当する場合、その確率は高くなります。

・両親のいずれかが熱性けいれんを起こしたことがある
・初めての発作時に1歳未満
・発熱してから1時間以内に発作を起こした
・発作時の体温が39℃以下

成長していくうちに発作は起こさないようになりますが、繰り返す可能性もあると認識しておくことが大事です。

熱性けいれんの治療は?

発作時の抗けいれん薬の使用、解熱剤の使用が主となります。

再発の可能性が高いなど、予防の必要があると判断された場合には、予防薬が処方されることもあります。

予防薬①ジアゼパム(ダイアップ)

ジアゼパムの予防での使用が考えられる基準は、以下の1)または2)を満たす場合です。

1)15分以上発作が継続した
2)次のⅰ~ⅳのうち2つ以上を満たした熱性けいれんが2回以上繰り返された
ⅰ、焦点性発作(部分発作)の要素がある、または24時間以内に繰り返した
ⅱ、神経学的異常、発達の遅れがみられている
ⅲ、家族に熱性けいれん、またはてんかんの人がいる
ⅳ、12カ月未満
ⅴ、発熱後1時間以内に発作が起きた
ⅵ、38℃未満で発作が起きた

発熱時にジアゼパムを使用することで、再発を高い確率で予防することができますが、副作用も考えられるため、熱性けいれんを起こしたすべての子供に、予防薬が処方されるわけではありません。

上記の条件に該当する子供であっても、ずっと予防で薬を使用する必要はありません。

最後の発作から1年たった後の再発率は3割以下、2年後では1割以下となり、成長によっても発作は起こらなくなっていくため、最後の発作から1-2年経過するか、5歳になった後では、予防での薬の使用は必要だと報告されています。

薬の使い方については、こちらの記事でもまとめています。

予防薬②抗てんかん薬

ジアゼパムを予防で使用しても、繰り返し発作が見られる場合には、抗てんかん薬を予防として用いることがあります。
フェノバルビタール、バルプロ酸、カルバマゼピンなどの薬が使用されます。

予防薬③アセトアミノフェン

5歳以下の子供に安全に使用できる解熱剤は、アセトアミノフェン(アンヒバ)です。
解熱薬の使用によって、熱性けいれんを予防できるという報告はないため、あくまで熱をさげるためだけの目的に使われます。

熱性けいれんの子供に注意が必要な薬

熱性けいれんの子供に使用すると、発作の持続時間が長くなることがあると報告されている薬があります。
古くから使われていて、眠くなる効果の強い抗アレルギー薬、喘息で使われるテオフィリンは、関連性はまだ不明なものの、発作の持続時間を長くするという報告があるため、使う際には注意が必要です。

熱性けいれんの子供は予防接種を受けていいか?

現在行われている予防ワクチンの中で、受けてはいけないものはありません。
成長後の感染予防や重症化の予防のために、基本的に予防接種は受けていただきたいですが、注意点があります。

予防接種では、注射後に副反応として熱を出すことがあります。
そのため、熱性けいれんの経験がある子供では、予防接種後に体調の変化がないかどうか、保護者がより気にかける必要があります。

特に、麻疹(はしか)、肺炎球菌、三種混合(DPT)、Hibワクチンでは、発熱の可能性が高いため、注意が必要です。
予防接種後に発熱を起こしやすい時間を以下にまとめます。

ワクチン名 接種後の発熱しやすいタイミング
麻疹(混合ワクチン含む) 7~10日
肺炎球菌 0~2日
三種混合(DPT) 0~2日
Hib 0~2日

最後に

繰り返しとなりますが、熱性けいれんは発作こそ派手なものの、その後の成長に影響を与える可能性は低い病気です。
発熱時には、発作を繰り返すことがないか、注意をしつつも過度な心配をすることなく、健やかな成長を見守っていただけたらと思います。

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。