ベタニス(ミラべグロン)とベオーバ(ビベグロン)は、ともにβ3アドレナリン受容体を選択的に刺激して、膀胱の筋肉を弛緩させることで、過活動膀胱の治療に役立つお薬です。
この二つは構造式もとてもよく似ていますが、強いて挙げるのならばどのような違いがあるのでしょうか?
今回の記事で考察してみました。
①錠剤の大きさ
ベタニスと比べて、錠剤の大きさが小さいことが特徴です。
左から順に、ベタニス錠25㎎、ベタニス錠50㎎、ベオーバ錠50㎎です。

過活動膀胱の治療薬を使用する患者さんは、高齢になるほど増え、飲みこみづらさを訴えることも多いので、粒が小さいことは選ぶポイントの1つになると思います。
②作用時間
ベオーバには、中央にピロリジン骨格があり、これにより化合物の安定性が向上します。

ベオーバのt1/2が約60時間なのに対し、ベタニスではその半分の約30時間となります。
現在はどちらも1日1回の服用なので、利便性で差がありませんが、これから使用経験が増えて、効果が長続きすることがわかれば、ベオーバは2日に1回の服用など、使い方に差が出てくるのかもしれません。
③警告や禁忌の有無
ベオーバの添付文書では、ベタニスに比較して警告や禁忌が少なく、肝腎機能低下患者での用量調整の必要性が挙げられていません。
併用禁忌がなく、相互作用が考えられる薬剤も少ないため、安全性が高い!という点でも売り出しがされています。
ですが、まだ発売からの期間が短く、使用経験が少ないため、添付文書に記載がないだけで、ベタニスに比べて安全で使いやすいものだ、と断言することはできません。
ベタニスで副作用が出てしまった方に、リベンジとして使う場合にも、安全性に過信せず、慎重に使用することが大事だと思われます。
④β3受容体選択性の違い
ベオーバの方がベタニスよりもβ3受容体への選択性が高いのではないかと思われます。
構造としては、ベオーバはピロリジン骨格を持ち、図に示す部分がcis体に固定されることにより、β3受容体への選択制が高められているという研究結果があるそうです。

また、それぞれのインタビューフォームの薬効薬理に関する項目に、β1~3の選択性を比較した内容があります。
ここでは、非選択性β受容体刺激薬であるイソプロテレノールの、各βアドレナリン受容体サブタイプに対する反応性との、比較が行われています。
イソプレテレノールの反応性を100としたときの、それぞれの相対値を以下の図にまとめます。
この数値が高くなるほど、最大反応が大きいことを示します。
β1 | β2 | β3 | |
ベタニス | 10 | 20 | 80 |
ベオーバ | 5 | 7 | 84 |
ベオーバの方が、β1とβ2に対する反応性が低く、β3に対する反応性が高いことが数値から見て取れます。
同じ条件で比較実験が行われているわけではないですし、比較実験がないため、この情報から断言はできませんが、以上のことから、ベオーバの方が、β3受容体選択性が高いのではないかと予想ができます。

rina

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