吸入器を選ぶ際に最も大事なことは、吸入器の使い方を理解して正しく使えるかどうかです。
それぞれのタイプの吸入器のメリットデメリットについて考えてみました。

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エアゾール(pMDI)


エアゾール製剤には、フルティフォーム、アドエア、キュバール、オルベスコ、アトロペント、サルタノール、フルタイド、メプチンエアーがあります。

エアゾールのメリット

使い方が、吸入器の上部分を押すだけ、であり操作が簡単です。
吸入ボタン(吸入器の上部分)が固いのがデメリットですが、専用の補助器具を装着すると、てこの原理で軽くなり、片手でも押すことができるようになります。

エアゾールのデメリット

エアゾール剤は、薬の噴霧にあわせてゆっくりと吸い込まなくてはいけません。
噴霧のタイミングに合わせて、2秒かけて息を吸い、5秒間息を止めなくてはいけませんので、これが難しい方には向きません。

また、吸入ボタンボタンがとても硬いことが挙げられます。
若い方でも片手で押すのは困難ですし、ご年配の方ではさらに難しくなってくると思われます。
薬局で無料で補助器具がもらえますので、申し出るとよいでしょう。

レスピマット

レスピマットには、スピリーバとスピオルトがあります。

レスピマットのメリット

吸入ボタンを押すと、薬が出ているのが見て取れますので、薬を吸っていることが分かりやすいと思われます。
薬がきちんと出ているかわからずに何度も使ってしまう、ということが少ない薬と思われます。

コンパクトで持ち運びにも便利です。

レスピマットのデメリット

カートリッジの挿入が硬くて、力の弱い方では難しいというデメリットがあります。
薬局でもセットをしてもらえますので、自信で行うのが難しい方はお願いするのもいいでしょう。
レスピマットを挿入してからの使用期限は、容器に記載されているものではなく、挿入してから3カ月になりますので注意が必要です。

また、使う際にレスピマットの下半分を回すという操作がありますが、力が必要です。
補助器もありますが、補助器を使ったからと言って必要な力が小さくなるわけではありません。
カートリッジの挿入は、家族や医療スタッフにしてもらうとしても、毎日の操作が自分でできるのかについて確認が必要です。

薬の噴霧時間が長いこともデメリットの1つです。
5秒かけて吸い、5秒間息を止めなくてはならないため、これが難しい方には向きません。

レスピマットも吸入ボタンを押すと、自動で薬が噴霧されるため、吸入器のタイミングに合わせて息を吸うという難しさがあります。

エリプタ

エリプタには、レルベア、エンクラッセ、アニュイティ、アノーロがあります。

エリプタのメリット

吸入器の操作が最もシンプルで簡単ということが第一のメリットとして挙げられます。
新しく吸入を導入する高齢者にも使いやすい製剤と思われます。

吸入時にわずかな甘みがあるため、吸っている感じが分かりやすいというメリットがあります。

エリプタのデメリット

吸入器の蓋を開けるだけで、薬が充填されてしまうため、使わない時に間違えて開けてしまうと、1回分の薬が無駄になってしまいます。
使用するとき以外は触らないようにするのが得策です。
簡単に薬が出てしまうため、家族に子供がいる際にも、触られないように注意が必要です。

吸入器が手のひらサイズで、他のものに比べて大きいため、バッグ内での存在感が大きいです。

タービュヘイラー

タービュヘイラーには、シムビコート、パルミコート、オーキシスがあります。

タービュヘイラーのメリット

コンパクトで持ち運びに便利です。

「クルッ」「カチッ」「スーッ」というように、使い方を感覚的に覚えやすい製剤です。

タービュヘイラーのデメリット

吸い込む薬の量が少なく、吸った感覚が分かりづらいのがデメリットです。
吸入操作では、右に回した状態で吸うのか、左に回した状態で吸うのか、分からなくなってしまう方も多いようです。
補助器具を使用すると、どちらで吸うのかが明確でわかりやすくなります。

また、残り回数のカウンターが正確ではなく、あと何回使えるのかがわかりづらいです。

ツイストへラー

ツイストへラーには、アズマネックスがあります。

ツイストへラーのメリット

ツイストヘイラーは、タービュヘイラーと作りが似ていますが、使いづらさや操作の難しさを改善した吸入器になっています。
キャップを回して開けるだけで、薬の充填が完了し、すぐに使える状態になります。

カウンターが0になると、キャップが開かなくなるため、薬が出なくなった後も使い続けてしまうという危険性がありません。

ツイストへラーのデメリット

間違えてキャップを開けてしまうと、薬が充填され、1回分が無駄になってしまいます。
エリプタと同様に、使用するとき以外は触らないようにするのが得策です。
簡単に薬が出てしまうため、家族に子供がいる際にも、触られないように注意が必要です。

2019年2月時点では、ステロイド薬の発売しかされていないため、β作動薬や抗コリン薬を用いたい際には、使える商品がありません。

ブリーズヘラー、ハンディへラー

ブリーズヘラーには、ウルティブロ、シーブリ、オンブレスがあります。
ハンディへラーには、スピリーバがあります。

ブリーズヘラーとハンディへラーの使い方は、ほとんど同じです。

ブリーズへラー、ハンディへラーのメリット

吸入器の中で、仕組みが最も原始的です。
吸入後には、カプセルの中の粉がなくなる、カラカラと鳴る、薬に味がする、など五感で感じることができるため、きちんと吸えているかどうかの判断がしやすい吸入器です。

ブリーズへラー、ハンディへラーのデメリット

他の吸入器では、毎回薬を充填する必要がありませんが、ブリーズヘラーやハンディへラーでは毎回新しいカプセルをセットしなくてはいけません。
中身が機械の中にあらかじめ入っていないため、外出先でカプセルだけ家に忘れてしまって使えなかった、というミスをおかす可能性があります。

ディスカス

ディスカスには、アドエア、フルタイド、セレベントがあります。

ディスカスのメリット

ディスカスの操作は、2ステップですが分かりやすいと思われます。
蓋を開けて、レバーをひくという操作なので、エリプタのように蓋を間違えて開けてしまったとしても、薬が無駄になることはありません。

ディスカスのデメリット

吸入器が手のひらサイズで、他のものに比べて大きいため、バッグ内での存在感が大きいです。

スイングヘラー

スイングヘラーには、メプチンがあります。

スイングヘラーのメリット

メプチンは、エアゾールでの発売もあります。
エアゾールと比較して自分のタイミングで吸うことができる利点があります。

スイングヘラーのデメリット

カウンターのある面を上に向け、吸入器を水平にしてから薬を充填して吸う、というように細かな注意点がたくさんある機械です。

ジェヌエア

ジェヌエアには、エクリラがあります。

ジェヌエアのメリット

おそらく最もハイテクな吸入器です。
吸入ボタンを押すと、薬が充填されて信号が赤から緑に変わり、正しく吸入ができると信号が緑から赤に戻ります。
視覚的に薬がきちんと正しく使えているかどうかを見て取ることができます。

カウンターが0になると、吸入ボタンが押せなくなるため、古いものをずっと使い続けてしまう危険性がありません。

吸入時には、甘みや苦みを感じますが、気づくかどうかには個人差があるようです。

ジェヌエアのデメリット

面白い吸入器ですが、2019年2月現在では、長時間作用型抗コリン薬しか発売されていません。
ステロイドやβ作動薬が必要な方には、選択肢にあげることができません。

まとめ

ジェヌエアは長時間作用抗コリン薬のみ、ツイストへラーはステロイドのみ、と使いたい成分がない!という制約は一部ありますが、基本的には使いやすいかどうかの観点で選ぶのは良いと思います。
現在使っている吸入薬が使いづらい、という方がいらっしゃれば、変更の際の参考にしていただけるとよいと思います。

最後に、以上の内容を表にまとめました。
あくまでも個人的な見解です。

吸入器 操作が簡単か? 成分の選択性
(ステロイド、β作動薬、抗コリン薬が発売されているか?)
高齢者向きか? 補助器具
エアゾール 〇(補助器有の場合)
レスピマット
エリプタ ×
タービュヘイラー
ツイストへラー × ×
ブリーズへラー
ハンディへラー
×
ディスカス ×
スイングヘラー × ×
ジェヌエア × ×
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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。