抗精神病薬は、非定型や定型に分類されることがあります。
これはどのような基準で分けられているのでしょうか?そしてどちらが優れているのでしょうか?

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定型と非定型抗精神病薬の分け方、一覧

昔から使われていた抗精神病薬を「定型」と呼び、比較的最近になってから開発されたものを「非定型」と呼びます。
定型、非定型に分類される薬を以下の表に示しました。

定型 非定型
ブロムペリドール(インプロメン)
ハロペリドール(セレネース)
レボメプロマジン(レボトミン、ヒルナミン)
クロルプロマジン(コントミン、ウインタミン)
プロぺリシアジン(ニューレプチル)
スルトプリド(バルネチール)
スルピリド(ドグマチール)
フルフェナジン(フルメジン、フルデカシン)
ペルフェナジン(ピーゼットシ一、トリラホン)
プロクロルペラジン(ノバミン)
トリフロペラジン(トリフロペラジン)
ピパンペロン(プロピタン)
スピペロン(スピロピタン)
モペロン(ルバトレン)
チミペロン(トロペロン)
チアプリド(グラマリール)
ネモナプリド(エミレース)
リスペリドン(リスパダール)
クエチアピン(セロクエル)
ペロスピロン(ルーラン)
オランザピン(エビリファイ)
アリピプラゾール(ジプレキサ)
ブロナンセリン(ロナセン)
クロザピン(クロザリル)
パリぺリドン(インヴェガ)

非定型抗精神病薬と定型の違いは?

非定型抗精神病薬と定型の分類の特徴は大きく3つが挙げられています。
これらの特徴を通して、どちらが優れているのかについても考察していきます。

①ドパミン受容体以外の伝達系に作用するか

定型抗精神病薬では、主にドパミン受容体のみに作用を及ぼします。
非定型抗精神病薬では、ドパミン受容体だけでなく、セロトニン受容体、ヒスタミン受容体、ムスカリン受容体、アドレナリン受容体などさまざまな受容体に作用します。

非定型の方が多様な受容体への効果があるため、優れているように見えますが、その分副作用も多様になります。
定型抗精神病薬には少なかった体重増加や耐糖異常が副作用として現れやすくなります。

作用する受容体が増えたからと言って、一概に優れているとは言えません。

②陰性症状に効果があるか

治療の対象となる症状には、幻覚や妄想などの陽性症状と意欲の減退や集中力の低下などの陰性症状があります。
定型抗精神病薬は陽性症状によく効くものの、陰性症状には効果が薄いと言われています。

非定型抗精神病薬であれば、一説には陰性症状には効果があるともいわれていました。
ですが、実際には陰性症状は治療が難しく、非定型であっても効果がうまくあらわれない場合があります。

現状ではどちらを使用しても、陰性症状は難治性であり、どちらが優れているとは言えないと思われます。

③錐体外路症状が起こりやすいか

非定型精神病薬は、定型のものよりも錐体外路症状の副作用が少ないと言われています。
錐体外路症状は、ドパミン受容体を高度に遮断することにより、パーキンソン病のような症状があらわれてしまう状態を指します。

昔ながらの抗精神病薬では、用量設定が妥当でないものも存在するため、錐体外路症状の副作用が多くなっています。

脳内のドパミン受容体占有率を考慮した用量では、副作用も起こりづらいため、薬の使い方が重要になってきます。

非定型抗精神病薬と定型ではどちらが優れているのか?

従来、新しく開発された非定型抗精神病薬の方が、定型よりも優れているという印象がありました。
ですが、違いに1つずつ注目してみると、それぞれにメリットとデメリットがあることが分かります。

非定型が優れているというイメージについては、薬のマーケティング自体の影響もあったのではないかと思われます。

アメリカで2007年、ブリストル・マイヤーズ スクイブに、エビリファイを未成年者と高齢の認知症患者に対して、適応外使用の違法なマーケティングをしたことによって約5億ドルの罰金が課された。

2009年、イーライリリーによる、ジプレキサの子供と高齢認知症患者に対する適応外用途のマーケティングなどによって、約14億ドルを支払った。

2010年、アストラゼネカは、非定型抗精神病薬セロクエル(クエチアピン)を高齢者や、死亡リスクを高める小児に適応外使用の違法なマーケティングを行い5.2億ドルの罰金が科された。

2012年、ジョンソン・エンド・ジョンソンの、認知症患者へのリスパダールの適応外使用の違法マーケティングなどによって、20億ドル前後の罰金が課されると推定される。

上の内容は、Wikipediaの非定型抗精神病薬のページからの抜粋ですが、マーケティングを少々強引に行っていることが分かります。
これらの宣伝の影響や新薬への期待により、非定型抗精神病薬が過大評価されていたのではないかと思います。

非定型抗精神病薬では耐糖異常や体重増加、定型では錐体外路症状と心配になってくる副作用に差があります。
どちらが優れている、というわけではなく、適材適所で使い分けしていくのが最もよいのではないかと考えます。

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rina

rina

都内薬局に勤務する現役薬剤師。 勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。 現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。