統合失調症などに使われる抗精神病薬のD2ブロッカーですが、その副作用として錐体外路症状と高プロラクチン血症があります。
これらはどのような副作用なのかについてまとめます。
目次
①錐体外路症状
錐体外路症状とは?
錐体外路症状では、パーキンソン病のような症状がみられます。
ドパミン受容体をブロックすることにより、ドパミンが十分に働かず、震えや筋肉のこわばりを引き起こします。
錐体外路症状を起こさないためには?
錐体外路症状の発生は、脳内のドパミン受容体占有率と相関します。
D2ブロッカーは脳内ドパミン受容体占有率が65~70%で抗精神病効果を発揮しますが、80%を超えてくるとパーキソニズムを発揮してしまいます。
例外としては、D2部分作動薬であるアリピプラゾールがあります。
ドパミン受容体占有率が高くなっても、完全にブロックすることがないため、錐体外路症状は起こりづらくなっています。
いずれにせよ、最適な用量で用いることが大事になってきます。
蛇足:リスペリドンの半減期と効果半減期
リスペリドンの血中半減期は20時間程度ですが、その効果の持続時間とは一致しません。
効果の持続は、脳内ドパミン受容体占有率がどのくらいの間保たれるのかに依存します。
リスペリドンの脳内ドパミン受容体占有率の半減期は72時間程度で、半減期よりずいぶん長く効果が持続することが分かります。
②高プロラクチン血症
高プロラクチン血症とは?
高プロラクチン血症とは、脳下垂体から分泌されるホルモンであるプロラクチンの血中濃度が高くなる状態を指します。
男性で15ng/mL、女性で20ng/mLを超えてくると高プロラクチン血症と言われます。
高プロラクチン血症の発症とD2受容体阻害の程度は、相関を示すことが分かっています。
高プロラクチン血症の症状は?
男性では、射精障害や勃起障害、女性化乳房、性欲低下などが見られます。
女性では、月経不順、無月経、乳汁分泌、性欲低下などが見られます。
プロラクチンは性機能に大きくかかわるホルモンです。
高プロラクチン血症を起こしやすい薬剤
抗精神病薬には、高プロラクチン血症を起こしやすい薬剤とそうでないものがあります。
血液脳関門(BBB)を通過しやすい薬剤では高プロラクチン血症が起こりづらく、通過しづらいものでは起こりやすい特徴があります。
BBBを通過するものは、大脳皮質に作用しますが、通過できないものは下垂体に作用するため、下垂体ホルモンであるプロラクチンの分泌を強く誘導してしまいます。
ドグマチール(スルピリド)では、高プロラクチン血症が起こりやすくなっています。
高プロラクチン血症で気を付けること
高プロラクチン血症は、最近まであまり重要視されてこなかった傾向があります。
症状が性に関するもので他人になかなか言いづらかったことや、女性化乳房など見た目だけに起こって生命には響かない症状であったことなどが原因として考えられます。
しかし、性機能は生活の面でも、精神的な自身の面でもとても重要なものです。
軽視せずに副作用の1つとして、発生していないのかモニタリングすることが大事です。

rina

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