自身は薬剤師ですが、その存在意義に疑問を感じることがあります。
薬剤師漫画のアンサングシンデレラでも冒頭で主人公がぼやいているように、医薬品のことがすべて網羅されているAIが開発された暁にはいらなくなる職業ではないかと危機感を感じています。
『処方を決める医師には疎まれ、患者さんには薬を出す窓口くらいにしか思われていない』
私自身、薬学や医学に対する知識を日々磨いていますが、残念ながら上記のような考えに共感し、薬剤師としての存在価値に自身を失っている部分があります。
薬剤師というスキルを持って、今後どのように社会に貢献していけばいいのか、迷いながら自分の意見をまとめてみました。
目次
世間でこれからの薬剤師の意義と言われていること
これからの薬剤師は、処方箋通りに薬を取り揃えているだけではだめだと言われます。
では、具体的に何をしたらいいのか?と問題提起したときに、副作用のモニタリングや治療の妥当性のアセスメントが挙げられることがあります。
これらについて考えることを述べたいと思います。
①副作用のモニタリングは必要なのか?
薬剤師の職務として、副作用の早期発見やモニタリングによる受診勧奨が大事だと言われています。
医師が見逃してしまった副作用を、医師よりも十分に時間を割くことによって発見するというものです。
とても大事なことだと思います。
寧ろできて当たり前のことだと思います。
ですが、医師がこぼした兆候を薬剤師が拾えるケースがどの程度あるでしょうか?
毎日?週1回?そんなに見つけられていないと感じています。
というのも、副作用のモニタリングは医師が十分に行っており、診察室ですでに報告されています。
処方変更が必要であれば、処方箋にすでに反映されていることが大部分です。
患者からしたら、処方について何の権限もない薬剤師に、症状について再度同じことを話さなくてはならないのです。
抗がん剤など、特に副作用の説明が必要な薬に対しては、診察時に服薬指導が行われています。
大事なことは何度でも伝えた方がよいですから、患者が同じ内容の話を2回聞かなくてはならない、というのは悪いことではありません。
ですが、同じ説明において医師と薬剤師で見解が異なれば、治療への不安をあおったり、医療不信を招いたりしてしまう原因となります。
大学病院のように、患者数が多く、一人一人に十分な時間が取れない医療機関でさえ、抗がん剤や注射などに対しては十分な説明がされています。
医師と患者の距離が近くなる医療機関では、さらにしっかり服薬指導がなされているでしょう。
副作用のモニタリングは大事ですが、薬剤師がいなくても十分なのではないでしょうか?
副作用のモニタリングだけでは、薬剤師の意義は示せないのではないでしょうか?
②治療の妥当性についてのアセスメントは?
医師の治療方針について、薬学的に妥当なのか考えるのが薬剤師の責務だ、と言われています。
しかし、これも意義を見出すのがなかなか難しいことだと思います。
薬学的にどうなのか、と疑問を持ち疑義照会したところで、医師が妥当だと判断するのであれば処方は覆らないからです。
先日以下のような処方箋を見かけました。
ロペミンカプセル1㎎ 16T 分4毎食後と寝る前
添付文書上のロペミンの用法は以下のように記載されています。
ロペラミド塩酸塩として、通常、成人に1日1~2㎎を1~2回に分割経口投与する。
なお、症状により適宜増減する。
一般的に、添付文書に記載される『適宜増減』の範囲は、2倍程度までと言われています。
今回の処方は、これをはるかに超えています。
臨床試験においても、使用されていた量は1日6錠までであり、それ以上の量を日常的に使用することの安全性は担保されていません。
処方医は自身の経験から、1日16錠を使用しても安全性は保たれると判断しています。
医師は専門科をもちますが、薬剤師はすべての科の処方せんを受け付けます。
たとえ薬学領域だとしても、専門医に専門領域で勝るのは難しいことだと日々感じています。
治療のアセスメントを薬剤師が行うことの意味はあるのでしょうか?
これからの薬剤師に必要だと思われること
ここまでで、世間一般的に言われている薬剤師の意義について疑問を述べました。
上記に挙げられた副作用のモニタリングや治療のアセスメントはできて当たり前として、プラスで何を身に着けるべきなのか、考えてみました。
①慢性疾患について医師並みの知識を持つこと
現在、日本ではリフィル処方箋は認められていません。
ですが、医療費削減の観点から症状が安定している患者について、海外同様にリフィル処方箋が使用できるようにされる可能性があります。
リフィル処方箋が可能になれば、受診間隔は現在よりも長くなります。
受診しない期間に体調の変化をモニタリングする役割は、薬剤師に求められるようになります。
薬剤師の責任は重くなり、街の内科医と同じような働きをすることになるのではないでしょうか。
このためには、現在の薬剤師の知識だけでは不十分だと思います。
薬だけでなく、病態やその他の治療など疾患の周辺知識について、詳しく学び知識をつける必要があります。
②サプリメントやOTC薬への知識
処方箋の調剤という点では、治療方針の決定は医師が主になるため、薬剤師固有の職能を生かせる場が少ないのではないかと思います。
ですが、病院に行かずに薬局へ健康相談に来た方や健康維持のためにサプリメントを考える方に関しては、薬剤師のマネジメントが重要な範疇です。
平均寿命が延び、医療費が増加していく中で、病気を未然に防ぐ予防医療が発達してくるものと思われます。
予防医療の助けとなるサプリメントや健康食品についての知識が必要になると思います。
サプリメントや健康食品は、食品としてカテゴライズされ、広告の仕方が医薬品とは異なります。
残念ながら、消費者の期待を過度に煽るような良心的でない商品や、間違ったもしくは偏った情報も存在します。
正しい情報はどれなのか、消費者の代わりに見極めることが必要とされると思います。
最後に
今回の記事に書かれている内容は、私の超個人的見解です。
豊富な経験と知識を持って活躍されている薬剤師の先生は、世の中に数多く存在しますし、記事内のネガティブな見解はひとえに私の無能さに起因するものだと思います。
こちらの記事を読んで不愉快になった方がいれば、申し訳ありません。
私自身、薬剤師という職に誇りを持てるよう精進していきたいです。

rina

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