ステロイドは、難聴、自己免疫疾患、炎症など幅広い疾患の治療に用いられます。
切れ味がよく、万能な薬ですが、高用量で用いる際には副作用にも注意が必要な薬です。
薬剤師として服薬指導する際に、チェックすべき副作用の症状についてまとめます。
添付文書を見ても多数の副作用がまとめられていますが、今回は特に職場で患者さまに接した際によく聞くもの、事前に予防策が提示されるものについて挙げさせていただきます。
目次
薬局で患者さまがよく訴えている副作用
①食欲の変動
ステロイドの服用により、食欲が増加するという声があります。
プレドニゾロンが10㎎程度の際に最も食欲が上昇すると伺います。
用量が増えるほど食欲が増すというわけではなく、30㎎など高用量の際には逆に食べられなくなることもあるそうです。
②ムーンフェイスや脂肪種など見た目の変化
ステロイドを飲むようになってから顔が丸くなった、首の後ろにこぶができた、などの声があります。
見た目の問題で、生命や治療経過に関与する副作用でないため、今まであまり重要視されてこなかった歴史があります。
しかし、若い方や女性の方では、とても気にされる方がいるので注意が必要です。
ムーンフェイスの発現は、用量はもちろんですが、投与期間に影響を受けるようです。
鉱質コルチコイド作用によって、ナトリウムの再吸収が促進され、むくみやすくなることによる見た目の変化もあるようです。
③不眠
そわそわして集中力が下がる、眠れないという声があります。
ブロチゾラムなど睡眠薬を使っても眠れない状態になることもあるようです。
予防薬が処方されることのある副作用
①感染症
ステロイドの免疫抑制作用によって、感染症にかかりやすくなります。
バクタなどの抗菌剤が毎日もしくは週3回程度の隔日投与で予防投与されることがあります。
感染症の予防として、うがいやマスクの着用が勧められます。
また、ステロイド開始前に麻疹や水痘などのワクチンの接種をしておくことが勧められます。
ただし、ステロイド服用中には、生ワクチンが原因で感染症を発症する恐れがあるため、接種は勧められません。
②消化性潰瘍
ステロイドの服用によって、胃酸の分泌が増加します。
この影響により胃へのダメージが強くなってしまいます。
症状の予防のために、PPIの併用がされることがあります。
③骨粗しょう症
ステロイドの長期服用により、骨密度が低下する可能性があります。
特に5㎎を超える用量では注意が必要です。
骨密度低下予防のために、ビスホスホネート製剤が併用されることがあります。
編集記
突発性血小板減少性紫斑病でステロイドを使用していた患者さんがいらっしゃいました。
ステロイドの漸減を進めており、10㎎から9㎎、8㎎と1㎎ずつ順調に減らしていましたが、7㎎まで変更した際に血小板数が一気に15000まで下がってしまいました。
8㎎までは全く問題なかったのに、7㎎にした途端に急激に数値が下がるという経過をたどったそうです。
ステロイドは効果が高い一方で副作用も多く、増減量時に繊細な注意が必要な薬剤です。
現時点で体調が安定していても、次の瞬間には大きく変化する可能性をステロイド服用中の患者さまは抱えていると思います。
重篤な状態を未然に防ぐために、医療者のモニタリングが重要です。

rina

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