SGLT2阻害薬を服用すると、開始後1か月程度で一時的に腎機能が下がることが報告されています。
これはなぜなのかについてまとめます。
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目次
糖尿病患者の腎臓の状態は?
糖尿病患者の腎臓の糸球体では、糸球体過剰濾過という状態になっています。
この状態の時には、糸球体の入り口である輸入細動脈の拡張、出口である輸出細動脈の狭小が認められます。
輸入細動脈の拡張には、糖尿病によって機能が亢進したSGLT2受容体が関与しており、糖やNaの再吸収が増加していることが原因として挙げられます。
また、輸出細動脈の狭小には、アンギオテンシンの亢進が関わっています。
以上の理由から、糖尿病患者の腎臓の糸球体には過剰な圧力がかかっており、腎臓は働きすぎの状態です。
これが続くと、尿中にアルブミンなどのたん白質が漏れ出る原因となったり、腎機能の低下を招く可能性があります。
SGLT2阻害薬を服用後に腎機能が下がる理由は?
先に述べたように、糖尿病患者の腎臓は糸球体過剰濾過という状態になっています。
SGLT2阻害薬を服用すると、輸入細動脈の拡張状態が解除されるため、糸球体に流れ込む血液量が少なくなります。
このため、糸球体濾過量は減るのです。(=働きすぎの状態から正常に戻っている)
一時的に腎機能は低下したようにみえますが、オーバーワーク状態のろ過機能を正常に戻すため、長期的に見れば腎機能は保たれるという試験結果も出ています。
このことから、腎機能保護薬として将来的に適応をとる可能性もあると思われます。
なぜSGLT2阻害薬を使用すると一時的に腎機能が下がるのか?
働きすぎで無理をしていた腎臓がもとの状態に戻るため
無理をしていたのをやめるため、長期的にみれば腎機能は保たれる
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rina
都内薬局に勤務する現役薬剤師。
勉強会や患者さんとの会話を学びの種にしてブログを運営。
現在、1年間の長期休暇をいただき、海外生活中。

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